松浦祐也 という役者

この映画にはポスティングのバイトをしている男として出演している。彼ほど身の上が面白い役者を知らない。詳しいことは彼が手に負った傷やM字の額をみれば分かる。かつて高校時代に履いていた靴はつま先に歯形がついていたらしい。なぜかは本人に聞いて欲しい。彼が指向する役者は殿山泰司小沢昭一とベレチオデルトロらしい。以前、一緒に小沢昭一にサインを貰いに行ったことがある。彼は数千円の額縁を買うのに数時間費やした。僕は額を買うという行動に驚いた。見たこともない挙動不審な顔で小沢さんだったらこれだよなと言って色紙の3倍くらいある赤い漆黒の額を買っていた。すでに鞄には小沢昭一の著作が数十冊入っていた。結局、あれほど練習していた自己紹介もままならず小沢昭一を目の前にしてうっすらと涙を浮かべるミスターストイック松浦祐也。彼は言った。あとは水木しげるにサイン貰うだけだ。彼の武勇伝は神話に値する。さっさと神話にして葬り去るべきだと業界筋は語る。きっと彼は壮絶なやり方で僕たちの期待を煽るだろう。無類の猫好きミスターストイック松浦祐也。