『素人アワー』編集作業秘話 〜あのころ見てた夢〜

夢の中で夢と分かって人殺しをしたことがある。その頃は人知れず夢の中で夢と自覚するための訓練に勤しんでいた。暗闇の中で目をつぶっているとまず、今日の出来事で印象深かったことなどが映像になる。映画などやってるからかもしれないけどカメラのファインダーを覗いている感じに近い(フレームになってるというのがたまらなく嫌だった。そのときみる夢のこともあまりに分かりやすくて嫌だった。つまらないとかじゃなくて安易な自己分析に耐えられない程の陳腐な夢だったから)しばらくすると(僕は横向きに寝るんだけど)立っているような錯覚に落ちて行き、終いにはすっかり立っている。それは妙な平衡感覚で、寝ているのが分かっている訳だから、自分は横になりながら立っているんだフフフとにやけたりする。そうするとバイト先(夜間のパチンコ屋の清掃をやっていた)の仲間達とハイエースに掃除用具のモップなどを運び込んでいて(夢と自覚できるが場面転換は強制的)こんな夢なんかほんとに下らないしどうせ夢だから最悪な悪態をついてやろうと思うんだけど、夢の中とはいえなぜか躊躇してしまう。ここにあるモップのフサフサを挟むクリップみたいなところでアイツ(別に嫌いでもなんでもなかったしむしろ良い人だと思っていたスキンヘッドの男性)の頭を叩いたらどうなるだろうと考えはするけどなかなか実行できない。自分でも分からないタイミングで、多分、同僚のヒップホップをやっているというイカした女性に「監督さん!」と冗談まじりで呼ばれたタイミングで、モップをスキンヘッドの頭に刺した。その手応えはどうしようもなく吐き気をもよおす類いのもので耐えられない程に不快だった。目覚めた後、今生では絶対に人殺しなどやめておこうと思った。それからというもの、ぶっ殺してやりたい程に人を憎むことはなくなった。というか、そんな夢ばかりみていたので、まったく睡眠した感じがしないままいつも24時間起きているかのような異常な時期だったから意気消沈していただけかもしれない。